山登り時には、水分補給が極めて重要です。季節によって異なりますが、1日に約2Lの水が必要と言われています。水筒(ボトル)は、登山装備の中でも重要なアイテムの一つです。耐久性や保冷・保温機能、持ち運びの便利さなど、ペットボトルでは提供されない機能性を備えています。
ここでは、登山用水筒(ボトル)のタイプと選び方を紹介します。
登山用水筒(ボトル)の機能性を考える
水筒(ボトル)は通常、水を携行するための道具ですが、登山では単に水を持ち運ぶだけでなく、野外活動を快適かつ安全にするための追加機能が求められます。以下では、登山で役立つ水筒(ボトル)の機能と、その使いどころについて考えてみましょう。
① 耐久性 山中で数日間過ごす登山では、水を手に入れることが難しいこともあります。そのため、水筒(ボトル)は頑丈でなければなりません。落としても壊れない耐久性のある水筒を選ぶことが大切です。
② 保温・保冷性 山での活動中、気温が体感に直結します。夏は冷たい飲み物、冬は温かい飲み物が必要です。長時間保温・保冷が可能な水筒(ボトル)を選ぶことで、快適な登山体験を楽しめます。
③ 携行性 大容量の水筒を一つだけ持ち歩くと、補給が難しくなります。小型の水筒をバックパックに収め、大きな水筒を予備として持つなど、携行性を考慮して選ぶことが大切です。また、重さも気にするポイントです。
④ 給水のしやすさ 水筒(ボトル)には様々な種類がありますが、飲み口の形状も異なります。自分の好みや使いやすさに合った水筒を選ぶことで、給水がスムーズに行えます。
3種類の登山用水筒の特徴を紹介します。すべての観点で完璧な製品はありませんが、重視する機能によって適した種類が見つかります。
- 耐久性を最重視するなら|プラスチックボトル
プラスチックボトルは、500mLでも約100gと軽量で、幅広い年齢層に適しています。耐久性に優れ、熱湯を注ぐことも可能です。透明なタイプが多く、残量が一目でわかります。スリムなモデルはサイドポケットに収納しやすく、行動中の水分補給に便利です。
おすすめ製品:nalgene(ナルゲン)/ ナルゲンボトル 1000ml ナルゲンは軽量で丈夫で漏れにくく、アウトドアで活躍するプラスチックボトルの代表的なブランドです。耐冷温度100℃〜-20℃であり、飲み物の風味を損ないません。
- 保温保冷性を最重視するなら|魔法瓶ボトル
魔法瓶ボトルは外界の気温に左右されず、液体の温度を一定に保ちます。主流の素材はステンレスで、他にもアルミやチタンなどがあります。保温性能や保冷性能を確認し、素材に合った製品を選びましょう。
おすすめ製品:THERMOS(サーモス)/山専用ステンレスボトル THERMOSは登山者向けに開発されたステンレスボトルで、厳しい条件下でも優れた性能を発揮します。保温性能は78度以上を6時間、50度以上を24時間保ちます。
- 軽さと容量を最重視するなら|ソフトボトル
ソフトボトルはポリ袋のような柔らかい素材で、非常に軽量で携行性に優れています。ウォーターキャリータイプ、ハイドレーションタイプ、ソフトフラスクタイプの3種類があり、それぞれ異なる用途に適しています。
おすすめ製品:platypus(プラティパス)/プラティ2Lボトル プラティパスのソフトボトルは最大2.5Lの容量を持ち、軽量かつ耐久性に優れています。BPAフリーの素材を使用し、未使用時にはコンパクトに収納できます。
■ハイドレーションタイプ(右) ウォーターキャリータイプと同様にバックパックに収納しやすいスリムなボトルですが、本体にはストローのような吸水用のチューブが付いています。このチューブから直接水分補給が可能で、バックパックを下ろさずに迅速に水分補給できます。
おすすめ製品:Hydrapak(ハイドラパック)/ ベロシティ 1.5L バックパックへの収納を考慮したスリムなデザインのハイドレーションボトルです。重量は約120gと、Hydrapakの中でも最軽量のモデルです。注入口は人間工学に基づいて設計されており、開閉が容易です。飲み口には水漏れを防ぐon/offバーが装備されています。
公式サイト:Hydrapak(ハイドラパック)/ ベロシティ 1.5L
■ソフトフラスクタイプ(左) トレイルランニングなどで使用する小型のソフトボトルです。バックパックのショルダーポケットに収納しやすく、容量は350〜600mlほどです。ボトルを握りながら水分補給ができ、ボトル内の水分が減ると体積も小さくなるため、激しい動きの中でも快適に水分を携行できます。
おすすめ製品:SALOMON(サロモン)/ソフトフラスク500ml ポケットにぴったりフィットする柔軟な素材を採用したソフトフラスクです。マチがない底部分のため、トレイルランパックのショルダーポケットにスムーズに収納できます。大口径の開口部で水分補給が容易で、氷を入れることも可能です。吸引可能なハイフローバルブを採用しており、どんなスピードでも素早く水分補給ができます。
山に持っていく水分の量はどれくらいでいいか、『登山の運動生理学とトレーニング学 [ 山本 正嘉 ]』(東京新聞出版局)の著者である鹿屋体育大学の山本正嘉教授によると、登山中に必要な水分量を計算する際には、まず体が失う水分量である「脱水量」を算出します。この計算式は以下の通りです。
脱水量(ml)=体重(kg)×行動時間(時間)×5
たとえば、5時間の行動をした場合、体重が50kg、60kg、70kgの成人の脱水量は次のようになります。
山本教授によれば、給水量は脱水量の70〜80%に設定され、以下の式で計算されます。
給水量(ml) = 脱水量 × 0.7〜0.8
先ほどの体重別の5時間行動した例では、以下のような給水量が求められます。
山の中での水分調達方法について考えたことがある人も多いでしょう。「山の中で水がなくなったらどうしよう…」という状況は、登山の安全性に影響を及ぼす重要な問題です。
山小屋や水場では、登山者向けに水の販売が行われていることもありますが、「煮沸してから」と指示されることもあります。山小屋では主に沢水や雨水を利用しており、安全な飲料水を確保するにはいくつかの方法が必要です。
そんな野外環境で安全な水を手に入れる方法として、浄水器があります。浄水器は水をフィルターに通すことで不純物や汚れを取り除き、飲用水に変えてくれます。浄水器があれば、山中の水を安心して飲むことができます。使用頻度は少ないかもしれませんが、災害時にも役立つため、持っておくと安心です。
おすすめの浄水器は、KATADYN(カタダイン)のビーフリーです。この浄水器はわずか59gと軽量で、柔らかい素材のボトル部分をくるっとまとめて収納できます。ボトル部分に水を汲み、キャップを閉め、ボトルを絞るだけで、99.9%の微生物やバクテリアが除去された安全な水が手に入ります。浄水器としてだけでなく、ボトルとしても使用できるため、バックパックの中でのウォーターキャリーとしても便利です。
大切な水分を持って、山に出かけよう
登山において、水筒は欠かせないアイテムです。今回は水筒の選び方やおすすめ製品について紹介しましたが、登山スタイルが多様化するにつれて、必要な水筒も増えてきます。さまざまな状況での登山経験を積みながら、自分に合った水筒やボトルを選んでいきましょう。
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