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山登り用の下着の選び方|汗冷えを予防し、命を守るためのガイド。素材の機能を解説します。

登山用の服装において、アンダーウェアは極めて重要な役割を果たします。登山の快適さや安全性に大きな影響を与える要素です。適切な選択をしないと、気候や気温の変化に適切に対応できず、体を冷やすことがあり、命に関わる危険もあります。登山用アンダーウェアの役割とその機能についてご紹介します。

山用の下着が推奨される理由

山で活動する際には、汗をかいたり雨に濡れたりして体が湿った状態が続くことがあります。この湿った状態が続くと、体温が徐々に下がり、冷えてしまいます。また、山では標高が上がるにつれて気温が低くなり、風の影響も大きくなるため、真夏であっても防寒対策が必要です。山での遭難事故では、低体温症が原因となることも多く、体を冷やすことは命に関わる可能性があります。

特に注意すべきは、「綿100%」の下着です。綿は吸湿性が高くて着心地がよいですが、湿気を含みやすく乾きにくい性質があります。そのため、汗を吸って湿ったままの状態が長時間続きます。このような状態は汗冷えや低体温症を引き起こす可能性があります。したがって、登山の服装においては、綿100%の素材は避けるべきです。

「レイヤリング」でみるアンダーウェア

活動中の必須レイヤリング。右からベースレイヤー、ミッドレイヤー、アウターシェル

登山の服装はレイヤリング(重ね着)が基本です。主に以下の4つのカテゴリーを組み合わせて装備します。

①ベースレイヤー(肌着)
②ミドル(中間)レイヤー
③サーマル(保温)レイヤー
④アウターレイヤー

一番下に着用し、直接肌に触れるウェアが、ベースレイヤーです。この「ベース(基礎)」という名前が示す通り、登山での服装の基盤を形成します。

この記事で取り上げる登山用アンダーウェアは、「ベースレイヤー」と、その下に着用する「ドライレイヤー」などの高機能なメッシュアイテムと見なされます。

ベースレイヤーは、いわば「第二の皮膚」のような存在です。活動中にかいた汗を肌から吸収して水分を発散し、肌を乾燥させるとともに、体温をコントロールする役割があります。

日常の下着は汗を吸収しにくく、乾きにくいですが、登山用のアンダーウェアは特に設計されており、着用することで快適さを実感できます。

ポイント① 登山に適した下着の機能
登山用のアンダーウェアに必要な機能として、「吸汗・速乾性」「保温性」「抗菌防臭効果」「伸縮性」などが挙げられます。

吸湿速乾性

「GOLDWIN(ゴールドウイン)ブリーザブルドライエアーフリースロングスリーブティーシャツ/UNISEX」。ポリエステル繊維の独自形状により、従来のポリエステル繊維より高い吸湿速乾性を持つ


汗をかいたときに水分を吸収し、迅速に乾燥する能力は、アンダーウェアにとって極めて重要なポイントです。

インナーが水分を吸収しても、速やかに乾かなければ、蒸れの原因となります。低温の環境で濡れたインナーを着用すると、体温が奪われる恐れがあります。

肝心なのは「肌から水分を逃がすこと」であり、撥水性や疎水性を備え、肌を乾燥させた状態を保つ機能素材を選ぶことが大切です。

保温性

「icebreaker(アイスブレーカー)200オアシスロングスリーブクルー/WOMENS」。高品質なメリノウール素材が、柔らかな着心地と程よい保温性を実現


山での活動中は、移動中は暑く感じても、立ち止まると寒さを感じることがよくあります。山岳地帯では標高が上がるごとに、気温が0.6℃下がるとされています。

夏の低山ではあまり重要視されませんが、冬や高山での活動では、インナーの保温性が重要になります。

抗菌防臭効果

「Rab(ラブ)フォースフーディー/MENS」。生地には抗菌防臭処理が施されており、長時間の着用にも対応可能です。


汗をかくことは登山中の夏だけのことではありません。冬でも、行動中は多くの汗をかきます。

湿った状態でインナーを長時間身に着けていると、特に化学繊維は雑菌が繁殖しやすくなり、不快な臭いを発生させます。長期間同じ服を着用する必要がある場合、抗菌防臭効果のあるインナーが理想的です。

伸縮性

「patagonia(パタゴニア)キャプリーンミッドウェイトクルー/WOMENS」。生地自体が伸縮性に富んでおり、体の形状に適合するよう立体的なカッティングが施されています。


登山中は常に体を動かしています。密着するインナーであるため、身体の自由な動きを妨げない、伸縮性のある素材が重要です。

登山用のアンダーウェアでは、柔軟性の高い繊維を使い、伸縮性を向上させるために特別な編み方をしており、体にフィットするようデザインされています。

ポイント② 素材の違い
登山用のアンダーウェアには、大まかに「化学繊維」「天然素材」、そしてその組み合わせである「ハイブリッド素材」の3つのカテゴリに分類されます。

化学繊維

「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)エクスペディションドライドットクルー/UNISEX」。フリース素材を使用し、防寒と通気性、発散性という相反する機能を両立させています。


ポリエステルやポリプロピレンなどの化学繊維は、優れた吸湿速乾性を持ちます。これらの素材は肌の表面の水分を繊維の表面で迅速に発散させるため、汗冷えや蒸れを防ぎ、激しい運動中でも衣服を乾燥させることができます。

たとえば、同じポリエステル100%でも、糸の質や織り方によって肌触りを重視したり、繊維が肌から離れた位置で乾くように工夫されている場合があります。

また、保温性や防臭性を高めたり、涼しさを感じさせるための処理が施された製品もあります。

化学繊維のアンダーウェアは軽量で耐久性があり、比較的リーズナブルな価格で入手できることが多いです。各アイテムの特性や機能をよく比較し、季節や使用条件に応じて選ぶことが大切です。

天然繊維

「YAMAP(ヤマップ)スーパーエクストラファインメリノロングスリーブ/WOMENS」。福井の老舗メーカー「アタゴ」との協業により、世界水準の製造技術を活かし、ウール素材の特有のチクチク感を解消しています。


天然素材であるウールは、優れた吸湿性と保温性を兼ね備えており、冷えを感じにくい特性があります。

中でも代表的なのが、肌触りの良い「メリノ種」の羊毛から作られる「メリノウール」です。この素材は優れた吸汗性を持ち、濡れても体温を保つため、寒さを感じにくくなります。また、薄手の素材であれば、暖かい時には涼しさを感じることもできます。

さらに、メリノウールは天然の抗菌作用を持つため、防臭効果も期待できます。

天然素材であるメリノウールは、化学繊維に比べて高価ですが、肌にまとわりつく感覚が嫌いな方や、天然素材の着心地を好む方におすすめです。

化学繊維+天然繊維

「STATIC(スタティック)オールエレベーションロングスリーブ/MENS」。速乾性と保温性のバランスに優れるため、メリノウールを50%、ポリエステルを50%組み合わせています。


化学繊維と天然繊維を組み合わせたハイブリッドな素材です。化学繊維の速乾性と天然繊維の保温性を兼ね備え、バランスの取れた素材として知られています。

化学繊維とウールを混紡したり、表面と裏面で異なる素材を使用したりするなど、様々なタイプの素材が開発されています。

ポイント③ 季節や登山する山によって使い分ける
【標高が高すぎない夏の山】涼しい素材やUVカット機能を重視

「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)ロングスリーブフラッシュドライ3Dクルー/WOMENS」。真夏でもしっかりと汗を吸い上げ、UVガード(UPF30-50+、紫外線カット率90%以上)機能も備えています。


速乾性はもちろんのこと、防臭効果やUVカット機能が備わったアンダーウェアがおすすめです。

特に暑い季節や激しい運動をする際には、速乾性による汗の蒸発によって体を冷やす効果のあるものや、通気性を高めて涼しさを感じさせるアンダーウェアが適しています。これらの製品は、汗を処理する機能と「涼しさ」を重視して設計されています。

ただし、こうしたクールダウン機能を持つアンダーウェアは、涼しい季節や高地での山行には適していますが、過度な体の冷却になりかねないので、使用時には注意が必要です。

【積雪期や標高の高い山】保温性のあるウェアを選ぶ

「HOUDINI(フーディニ)アクティビストタートルネック/MENS」。メリノウール60%とテンセル40%のブレンド素材で、優れた保温性を提供しています。


低温の季節や高所での山行では、中厚や厚手の素材、または裏地が起毛しているタイプ、首元をしっかりカバーするハイネックタイプなど、暖かさを確保する素材を選ぶことが大切です。

しかし、冬季でも、氷の壁を登攀したり、積雪の中を進むような激しい活動を行う場合は、運動中に大量の汗をかくことがあります。そのような場面では、化繊や混紡素材が適しています。

さらに、保温性を重視する場合はウール素材を選択すると良いでしょう。夏でも適切に使えば、低地や活動量の高い場所以外でも重宝しますし、山小屋での宿泊時にも役立ちます。

高性能なメッシュアンダーウェアもおすすめ

ベースレイヤーの下にさらに1枚着るアンダーウェアもあります。それが、finetrack(ファイントラック)の「ドライレイヤー」など、高性能なメッシュ素材のアンダーウェアです。

これ1枚では効果が発揮されませんが、吸水性と速乾性に優れたベースレイヤーの上にしっかりと重ねて着用することで、その効果を発揮します。

メッシュアンダーウェアは、高い撥水性を持ち、発汗時に繊維に水をため込まず、メッシュの孔から汗がベースレイヤーに速やかに吸収される仕組みです。

これにより、汗をかいても肌はすぐに乾いた状態を保ち、湿ったベースレイヤーが肌に直接触れることがなくなり、汗冷えが防がれます。

メッシュアンダーウェアにはさまざまな種類がありますが、最初は通年で使えるスタンダードなものから選ぶと良いでしょう。

オールシーズン使えるfinetrackのドライレイヤーベーシック。「ドライレイヤーベーシックブラタンクトップ/WOMENS」


finetrackの「ドライレイヤーウォーム」は、ドライレイヤーベーシックの約1.5倍の保温力を持っています。「ドライレイヤーウォームブラトップ ロングスリーブ/ブラック/WOMENS」


アンダーウェアで安全を確保する

登山において最も重要なことの一つは、体温を適切に保つことです。体が濡れたままでいると、体温が下がり、低体温症のリスクが高まります。これは命にかかわる危険性すらもあります。

肌に直接触れるアンダーウェアの選択は、登山装備の基礎となる重要な要素です。その機能を理解し、自信を持って選ぶことが必要です。


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