箱根と聞けば、温泉、芦ノ湖、大涌谷、箱根神社。
そんな「観光地・箱根」のイメージが強いですが、実はしっかり山歩きを楽しめる場所でもあります。
今回歩いたのは、箱根駒ヶ岳から箱根最高峰の神山を経て、芦ノ湖畔の湖尻へ下る縦走ルート。
しかも普通の登山とは少し違います。
スタートは麓ではなく、箱根園からロープウェーに乗って一気に標高約1,300mの世界へ。
そこから箱根駒ヶ岳、箱根元宮を巡り、神山へ。そして最後は防ヶ沢を通って湖尻まで下っていきます。
登った標高差は279mなのに、下った標高差は891m。
「登るより、下る。」
なかなか珍しい登山になりました。
そして今回のもうひとつの目的が、長い間歩くことのできなかった神山です。
2015年の大涌谷の火山活動以降、周辺の登山道は長期間閉鎖されていましたが、駒ヶ岳~神山間は2025年3月28日に再開。約10年ぶりに箱根最高峰へ歩いて行けるようになりました。
今回の登山データ
| 項目 | データ |
|---|---|
| 登山日 | 2026年4月25日 |
| 山 | 箱根駒ヶ岳・神山 |
| 日程 | 日帰り |
| 距離 | 7.2km |
| 行動時間 | 3時間38分 |
| 休憩 | 14分 |
| のぼり | 279m |
| くだり | 891m |
| YAMAPコース定数 | 11・やさしい |
今回のルートは、
箱根駒ヶ岳ロープウェー駒ヶ岳頂上駅
→ 相模湾展望広場
→ 箱根駒ヶ岳
→ 箱根元宮
→ 神山
→ 防ヶ沢登山口
→ 防ヶ沢登山口入口
→ 湖尻バス停
という一方通行の縦走です。
ロープウェーを使って標高を稼いでいるため、数字だけを見るとかなり楽そうに見えます。
ただし、この「くだり891m」がポイント。
後半は長い下山が続くため、数字以上に脚へ疲労が溜まりました。
箱根園からロープウェーで標高1,300mの世界へ
今回の登山は、箱根園からスタート。
ここから箱根駒ヶ岳ロープウェーに乗り、駒ヶ岳山頂へ向かいます。
箱根園から山頂までは約7分。
登山開始前からロープウェーというのも、箱根ならではです。
普通なら何時間もかけて稼ぐ標高を、あっという間にワープ。
「こんなに楽をしていいのだろうか」
と思わなくもありません。
でも今日はこれでいいのです。
この先には神山があります。
そして帰りはロープウェーではありません。
現在の箱根駒ヶ岳ロープウェーは通常9時から運行していますが、営業時間や運休日は変更される可能性があるため、出発前に公式サイトを確認するのがおすすめです。
まずは相模湾展望広場へ
山頂駅を出ると、いきなり空が広い。
樹林帯を何時間も登ったあとに突然展望が開ける山とは違い、ここでは最初からクライマックスのような景色が待っています。
今回の空は厚い雲に覆われていました。
快晴の大パノラマとはいかなかったものの、眼下には芦ノ湖。
その向こうには箱根の山々が幾重にも重なっています。
青空の絶景もいいですが、雲の下に静かに連なる山並みも悪くありません。
むしろ少し重たい空のおかげで、観光地とは思えないほど落ち着いた山の表情を見ることができました。
天気が良ければ、駒ヶ岳山頂からは富士山や芦ノ湖、相模湾方面まで見渡せる大展望が期待できます。
箱根駒ヶ岳山頂へ
相模湾展望広場から歩いて間もなく、箱根駒ヶ岳山頂へ。
標高は1,356m。
ロープウェーを降りてから短時間で着いてしまいますが、立っている場所は立派な山頂です。
周囲を遮る高い木が少ないため、とにかく空が広い。
今回の写真を振り返ってみても、芦ノ湖と箱根外輪山を一望できる景色は、この登山の中でも特に印象的でした。
そして駒ヶ岳山頂周辺でもうひとつ外せない場所があります。
天空に建つ「箱根元宮」へ
山頂付近には、箱根神社の奥宮である**箱根元宮(はこねもとつみや)**があります。
山の上にぽつんと建つ社殿。
その姿には、麓の箱根神社とはまた違った雰囲気があります。
観光でロープウェーに乗ってここだけを訪れる人も多い場所ですが、これから神山へ向かう登山者にとっては、ここが本格的な山歩きとの境界線。
ここまでは観光。
ここから先は登山。
そんな感覚です。
参拝を済ませ、いったん駒ヶ岳頂上駅方面へ戻ります。
ここからが本番。箱根最高峰・神山へ
10時15分ごろ、駒ヶ岳頂上駅付近から神山へ向けて出発。
ここから景色は一変します。
開放感抜群だった駒ヶ岳とは違い、神山への道は次第に山らしい雰囲気へ。
観光客の姿も減り、静かな登山道になります。
そして約44分。
10時59分、神山山頂に到着。
標高約1,438m。
箱根山の最高峰です。
派手な展望が広がる山頂ではありません。
木々に囲まれ、駒ヶ岳のような360度の大パノラマもない。
それでも、ここには別の価値があります。
約10年間、簡単には立つことのできなかった山頂。
そう思うと、小さな山頂標識の見え方まで少し違ってきます。
駒ヶ岳が「景色を楽しむ山」なら、神山は歩いて到達することそのものを楽しむ山なのかもしれません。
駒ヶ岳と神山はセットで歩くと面白い
実際に歩いて感じたのは、この二つの山の対照的な面白さです。
駒ヶ岳は広く、明るく、展望抜群。
一方の神山は樹林に包まれ、静か。
華やかな駒ヶ岳から、静かな神山へ。
距離はそれほど離れていないのに、まるで別の山を歩いているようでした。
最近の登山記録でも、駒ヶ岳は芦ノ湖などの展望が魅力である一方、神山山頂は木々に囲まれ展望が少ないという声が多く見られます。
だからこそ、どちらか一座だけではなく、二座をセットで歩くのがおすすめです。
神山から防ヶ沢へ。ここから長い下り
神山山頂で少し休憩して、11時13分に下山開始。
ここから防ヶ沢登山口までは約1時間30分。
今回の登山で一番長く歩いた区間です。
標高グラフを見ると、このあたりからゴールまで基本的にずっと下り。
「登らなくていいなら楽じゃない?」
と思ってしまいますが、長い下りは意外と体力を使います。
太もも。
膝。
足首。
時間が経つほど、じわじわ効いてきます。
特に濡れた地面や落ち葉の上では滑りやすくなるため、下りだからと気を抜かない方がいいでしょう。
最近の登山記録でも、雨のあとにはぬかるみが目立つという報告があります。
ストックがあると、かなり楽になる区間だと思います。
春の箱根は足元にも小さな楽しみ
今回歩いたのは4月下旬。
駒ヶ岳周辺では桜が残り、登山道では白い小さな花にも出会いました。
山頂から見える大きな景色もいいですが、春の山では足元を見ながら歩く時間も楽しいものです。
冬を越えた山が少しずつ色を取り戻していく季節。
派手ではありませんが、
「あ、咲いている」
と足を止める瞬間が何度もあります。
こういう小さな発見があるから、同じ山でも季節を変えて歩きたくなります。
防ヶ沢登山口から湖尻へ
12時44分、防ヶ沢登山口へ到着。
ここまで来れば、大きな山歩きはほぼ終了です。
さらに防ヶ沢登山口入口を通り、13時13分ごろ湖尻バス停へ。
無事ゴール。
駒ヶ岳山頂駅を出発してから3時間38分。
ロープウェーで山の上からスタートし、最後は芦ノ湖畔まで歩いて下りてくる。
振り返ってみると、なかなか面白いルートです。
往復登山とは違って、景色が後戻りしない。
スタートとゴールが違う縦走ならではの「旅をした感覚」がありました。
初心者でも歩ける?
YAMAPの今回のコース定数は11・「やさしい」。
距離7.2km、のぼり279mなので、数字だけを見ると初心者向けです。
ただ、完全な初心者コースかと言われると少し注意が必要です。
初心者向けと感じるポイント
- ロープウェーで標高を稼げる
- 距離は7.2kmと比較的短い
- 大きな登り返しが少ない
- 駒ヶ岳周辺には施設がある
- 約4時間で歩ける
一方で、
注意したいポイント
- 下りが約900mある
- 神山以降は普通の登山道
- 雨の後はぬかるみやすい
- 火山地域の登山である
- 観光用の靴ではなく登山靴が安心
- スタート地点とゴール地点が違う
という特徴があります。
そのため、
「初めて山へ行く人」より、「何度か低山を歩いたことがある初心者」におすすめ
というのが実際に歩いた印象です。
特にロープウェーを降りた直後の雰囲気だけで、
「このまま観光気分で行けそう」
と思わないこと。
神山から先は、きちんとした登山装備で歩きたいコースです。
アクセスは公共交通機関との相性がいい
今回のように、
駒ヶ岳山頂駅 → 神山 → 湖尻
と歩く場合、スタート地点とゴール地点が違います。
そのため公共交通機関との相性が非常にいいルートです。
箱根駒ヶ岳へは、まず芦ノ湖畔の箱根園へ向かい、そこからロープウェーを利用します。
箱根駒ヶ岳ロープウェーは箱根園と山頂を約7分で結んでいます。
車の場合は箱根園に有料駐車場がありますが、湖尻に下山したあと車を回収する必要があります。
そのためこの縦走をそのまま歩くなら、
行きは箱根園、帰りは湖尻からバス
という公共交通機関利用がシンプルです。
トイレ・水分について
駒ヶ岳山頂駅にはトイレがあります。
一方、神山から防ヶ沢へ入ると山中で簡単に施設へ立ち寄れるルートではありません。最近の登山記録でも、トイレは駒ヶ岳山頂駅などで済ませてから山へ入っているケースが見られます。
そのため、
駒ヶ岳頂上駅を出る前にトイレを済ませておく
のがおすすめです。
飲み物についても、登山道途中での補給を前提にせず、必要な量を事前に持って入りましょう。
下り中心だからと水分を少なくすると、意外と汗をかきます。
神山登山で必ず知っておきたい現在の規制
ここは重要です。
駒ヶ岳~神山~防ヶ沢方面は通行できますが、神山から大涌谷方面へ抜ける登山道は現在も通行止めです。
箱根町も、大涌谷周辺の火山活動による規制として「神山-大涌谷」などのコースを通行止めとしています。
また箱根町は、駒ヶ岳~神山間について、
- 急峻な場所では足元に注意する
- ガスの臭いを感じた場合は直ちに下山する
よう案内しています。
さらに2026年6月8日から2027年2月28日までは、駒ヶ岳・神山山域でニホンジカの捕獲作業も実施されています。登山道から外れないよう注意が必要です。
火山地域なので、以前歩けたから今回も歩けるとは限りません。
登山前には必ず箱根町などの公式情報で最新の通行状況を確認してください。
このコースがおすすめなのはこんな人
- 箱根で普通の観光とは違うことをしてみたい
- 初心者向けの縦走登山をしてみたい
- 芦ノ湖を上から眺めたい
- 箱根最高峰・神山に登ってみたい
- ロープウェーも登山も楽しみたい
- 4時間前後で歩ける山を探している
- 展望の山と静かな樹林の山を一度に楽しみたい
特に、
「登山はしてみたいけれど、最初から標高差1000mを登るのはちょっと……」
という人には面白い選択肢です。
ロープウェーという文明の力は、遠慮なく使いましょう。
山は、苦労した距離を競う場所ではありません。
まとめ|観光地・箱根の裏側には、ちゃんと「山」がある
今回歩いた箱根駒ヶ岳・神山。
駒ヶ岳では芦ノ湖を見下ろす開放的な景色。
山頂には箱根元宮。
そこから森へ入り、約10年ぶりに歩けるようになった道をたどって箱根最高峰・神山へ。
そして最後は芦ノ湖畔の湖尻まで、ひたすら自分の足で下っていきました。
距離7.2km。
行動時間3時間38分。
のぼり279m。
くだり891m。
数字だけを見ると少し変わった登山です。
でも、
ロープウェー。
天空の神社。
大展望。
静かな森。
箱根最高峰。
そして芦ノ湖。
これだけ違う表情を3時間半ほどの山歩きで体験できるルートは、なかなかありません。
温泉や観光だけではない箱根。
次に箱根を訪れるときは、ロープウェーを降りたところで引き返さず、その先へ歩いてみるのも面白いと思います。
そこから先には、観光地のイメージとは少し違う、静かな箱根の山が待っています。



















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