誕生日に登る山って、なんとなく特別なものにしたくなる。
せっかくなら少し歩きごたえがあって、山頂もいくつか踏めて、最後は駅や道の駅に下りられるルートがいい。そんな気持ちで選んだのが、名郷から前武川岳、武川岳、蔦岩山、焼山、横瀬二子山を越えて芦ヶ久保へ抜ける奥武蔵の縦走ルート。
結果から言うと、最高に楽しかった。
そして、思っていた以上にしんどかった。
距離は約11km。数字だけ見るとそこまで長くない。けれど、累積標高差はのぼり1138m、くだり1154m。しかもこのルート、ただ登って終わりではなく、登って、下って、また登って、また下る。まさにアップダウンの連続だった。
スタートは名郷。静かな奥武蔵の山歩きへ
今回のスタートは名郷バス停。
朝の空気はまだ落ち着いていて、これから始まる縦走に少しだけ緊張感がある。名郷周辺は奥武蔵らしい山里の雰囲気が残っていて、歩き出しからどこか穏やかだ。
ただし、穏やかなのは最初だけ。
前武川岳へ向かう登りに入ると、じわじわと標高を上げていく。森の中を進む時間が長く、派手な展望がずっと続くタイプの山ではない。けれど、そのぶん「山の中に入っていく感覚」が濃い。
一歩ずつ登っていると、呼吸が少しずつ深くなる。
誕生日にこれはなかなか渋い選択をしたな、と思いながらも、こういう静かな登りは嫌いじゃない。
前武川岳から武川岳へ。ここからが本番
前武川岳に着くと、ようやくひと区切り。
でも、このルートの本番はむしろここからだった。
武川岳までは奥武蔵らしい稜線歩き。樹林帯中心で、派手さよりも歩きごたえが勝る道だ。武川岳はベンチもあり、休憩するにはちょうどいい山頂。今回もここで少し息を整えた。
他の登山者の記録を見ても、この名郷から芦ヶ久保へ抜ける縦走は「距離のわりに疲れる」と感じる人が多いようだ。実際に歩いてみると、その理由がよくわかる。
登り切ったと思ったら下る。
下ったと思ったらまた登る。
しかも、道によってはザレた下りや急な箇所もある。
体力だけでなく、足元への集中力もじわじわ削られていくタイプのルートだった。
蔦岩山、焼山へ。武甲山の存在感が近づく
武川岳を越えて蔦岩山、焼山へ向かうあたりから、ルートはさらに縦走らしくなる。
この区間は、気持ちいい稜線歩きと、少し気を遣う下りが交互にやってくる。春の山らしく、木々の間にやわらかい色が混じり、ところどころに花も見える。静かな山道の中に、ふっと季節を感じる瞬間があるのがいい。
そして、焼山の楽しみはやっぱり武甲山。
奥武蔵を歩いていると、武甲山は何度も存在感を見せてくれる。特に焼山周辺から見る武甲山は迫力がある。削られた山肌も含めて、ただ美しいだけではない、重みのある景色だった。
山って、きれいなだけじゃない。
人の暮らしと結びついて、姿を変えながらそこにある。
そんなことを少し考えさせられる眺めだった。
山ごはんはバースデー仕様。山で焼く肉は強い
今回の活動記録でいちばん目を引く写真は、やっぱり山ごはん。
フライパンの上で焼かれる肉とネギ。湯気まで感じるような写真で、これだけで「今日の登山、勝ちじゃん」と言いたくなる。
誕生日に山で肉を焼く。
これ以上わかりやすいご褒美があるだろうか。
山で食べるごはんは、なぜか普段の何倍もおいしい。疲れた体に塩気と熱が入ってくる感じ。景色のいいレストランも素敵だけれど、落ち葉の上で湯気を見ながら食べる肉には、また別のぜいたくがある。
今回のバースデー登山は、アップダウンに削られながらも、この山ごはんでかなり回復した気がする。
二子山へ向かう最後の踏ん張り
焼山を越えたあとも、まだ終わりではない。
横瀬二子山の雄岳、雌岳へ向かう道は、最後のひと踏ん張りという感じ。すでに脚には疲れが溜まっているのに、ここでもしっかり登らされる。
他の登山者の記録でも、二子山周辺の急な下りやロープ場に触れているものが多い。実際、疲れている後半にこういう道が出てくると、体力よりも集中力が大事になる。
「もうすぐ下山」と思いたい気持ちと、
「まだ気を抜いちゃダメだ」という冷静な自分。
このせめぎ合いも、縦走の後半らしい時間だった。
芦ヶ久保へ下山。最後は道の駅へ
二子山を越え、兵の沢コース登山口へ下りると、ようやく山道の緊張感が少しゆるむ。
そのまま道の駅 果樹公園あしがくぼ方面へ。ゴールが近づくにつれて、登山モードから日常へ戻っていく感じがある。山の中ではあんなに長く感じた時間も、下りてしまえばあっという間だったように思えるから不思議だ。
今回の行動時間は6時間45分。休憩を含めてしっかり歩いた一日だった。
距離は約11kmでも、累積標高差は1000m超え。コース定数も「きつい」に分類されるだけあって、初心者向けの軽いハイキングというよりは、ある程度歩き慣れた人向けの縦走ルートだと思う。
このルートを歩くなら気をつけたいこと
名郷から武川岳、焼山、二子山を経て芦ヶ久保へ抜けるルートは、奥武蔵らしい静かな山歩きが楽しめる一方で、アップダウンが多く、体力をじわじわ削られる。
特に注意したいのは、後半の下り。疲れた状態でザレた道や急な箇所を歩くことになるので、トレッキングポールやグリップの効く登山靴があると安心だ。
また、展望が開ける場所は限られるものの、焼山周辺や二子山付近では武甲山の迫力ある姿を楽しめる。新緑やツツジの時期に歩けば、樹林帯中心の道にも彩りが加わる。
水分と行動食はやや余裕を持っておきたい。
「距離が短めだから大丈夫」と油断すると、アップダウンで思った以上に消耗する。
まとめ:誕生日にふさわしい、しんどくて楽しい奥武蔵縦走
今回のバースデー登山は、まさに「アップダウン多すぎ!」というタイトルがぴったりの一日だった。
名郷から前武川岳、武川岳、蔦岩山、焼山、横瀬二子山を越えて芦ヶ久保へ。ひとつひとつの山は派手ではないかもしれない。でも、つないで歩くことで、しっかり記憶に残る縦走になる。
静かな森。
じわじわ効いてくる登り。
気を遣う下り。
焼山から見る武甲山。
そして、山で焼くバースデー肉。
きつかったけれど、楽しかった。
疲れたけれど、また歩きたくなる。
そんな奥武蔵らしい一日だった。
誕生日に楽な道を選ばず、あえてアップダウンの多いルートを歩く。
それもまた、自分らしい祝い方なのかもしれない。





















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